「切らない眼瞼下垂の手術なら、傷も残らないし、仕事も休まなくて済むのでは?」
「糸で留めるだけと聞いたけれど、すぐに元に戻ってしまわないか心配」
「私のまぶたでも受けられるの? 切る手術をすすめられたら、どう考えればいいの?」
メスを使わないと聞くと、気持ちがぐっと楽になりますよね。その一方で、本当に自分に合っているのか、判断の材料が少なくて迷っている方も多いと思います。
この記事は、形成外科専門医として20年以上まぶたの治療を専門に行ってきたDr.簗(やな)由一郎監修のもと、切らない眼瞼下垂(がんけんかすい)手術についてご説明しますね。
向いている方と向いていない方、ダウンタイムとリスク、切る手術との選び方まで、良い面も気になる面も正直にお伝えします。なお、切らない眼瞼下垂手術は原則として自費診療です。
も く じ
Toggle切らない眼瞼下垂手術とは|糸でまぶたの開きを整える方法

切らない眼瞼下垂手術は、メスで皮膚を切らずに、糸を使ってまぶたの開きを改善する手術です。埋没式挙筋短縮術(まいぼつしききょきんたんしゅくじゅつ)などと呼ばれることもあります。
まぶたを持ち上げているのは、眼瞼挙筋(がんけんきょきん)という筋肉です。眼瞼下垂は、この筋肉の力がまぶたの縁にうまく伝わらなくなり、まぶたが下がってくる状態をいいます。
切らない手術では、この挙筋を糸で補強・調整して、力が伝わりやすい状態を作ります。皮膚を切らないため、腫れが少なく、ダウンタイムが短いのが特長です。
ただ、「切らない手術」とひとくくりに呼ばれていても、中身は1種類ではありません。大きく分けると、次の2つの考え方があります。
- 挙筋を糸で補強・調整して、まぶたを開く力を助ける方法
- 挙筋の働きは保たれていて、余った皮膚が視界をふさいでいる場合に、挙筋を短くせず糸で皮膚だけを処理する方法
後者は、まぶたを開く力そのものには手を加えません。余った皮膚を糸で処理することで視野の改善を目指す方法で、二重がはっきりするため、美容面でも喜ばれることがあります。
同じ「まぶたが重い」というお悩みでも、原因が開く力なのか、余った皮膚なのかで、選ぶ方法が変わってきます。
切る手術とは、何が変わるのか
切らない手術で変わるのは、主に皮膚を切るかどうかと、糸で支えるかどうかです。
挙筋前転法(きょきんぜんてんほう)のような切る手術では、まぶたの皮膚を切って内部を直接見ながら、ゆるんだ部分を留め直します。余った皮膚や脂肪も、その場で処理できます。
切らない手術は、皮膚を切らないぶん、体への負担が小さくて済みます。その一方で、内部を直接見て処理するわけではないので、できることには限りがあります。この違いが、次にお話しする「向く人・向かない人」につながっていきます。
切らない手術に向く人、切る手術をおすすめする人

切らない手術が向いているかどうかは、症状の強さと、まぶたを開く力がどのくらい保たれているかで考えます。
切らない手術が候補になりやすいのは、次のような方です。
- 眼瞼下垂の程度が軽い
- まぶたを開く力(挙筋の働き)が保たれている
- 仕事や家事の都合で、長い休みを取りにくい
- 目元の印象をはっきりさせたい、という美容面のご希望がある
- 余った皮膚が視界をふさいでいて、体への負担が少ない方法を希望している
反対に、切る手術を含めて考えたほうがよいのは、次のような方です。
- 眼瞼下垂の程度が強く、黒目の多くにまぶたがかかっている
- まぶたを開く力そのものが弱くなっている
- 視界の狭さや、額に力を入れて見るクセなど、機能的な症状がはっきりしている
- 長く続く効果を優先したい
症状が重い方や、効果の持続を重視する方には、切開式の挙筋前転法をおすすめすることもあります。
切らない手術は、切る手術を軽くしたものではありません。向いている条件が違う、別の方法と考えていただくのがよいと思います。
自分の状態がどのあたりなのかを確かめたい方は、セルフチェックの記事も参考になさってください。詳しくはこちらの記事にまとめています。
ただし、セルフチェックはあくまで目安です。開く力がどのくらい残っているかは、診察で実際にまぶたの動きを見ないと判断できません。
手術の前に、原因を確かめておきたいケース
まぶたが下がる原因は、眼瞼下垂だけではありません。次のような場合は、手術の方法を考える前に、原因を調べることが先になります。
- ある日急にまぶたが下がってきた
- 物が二重に見える
- 朝は問題ないのに、夕方になると極端に下がるなど、1日のうちで大きく変わる
- 片目だけ急に下がってきた
まぶたそのものではなく、神経や筋肉の病気が関係していることがあるためです。こうした症状がある場合は、様子を見ずに医療機関を受診してください。
ダウンタイムとリスク|切らなくてもゼロにはなりません

切らない手術のダウンタイムは、3日から1週間程度が目安です。切開をともなう手術より短いのは確かですが、何も起きないわけではありません。
手術のあとに出やすい変化
- まぶたの腫れや、むくんだ感じ
- 内出血
- 目のゴロゴロした違和感
- 一時的な左右差
腫れの程度には個人差があり、接客のお仕事などで人と近い距離で話す方は、少し余裕をもって予定を立てておくと安心です。仕事復帰の目安は、こちらの記事で職種別にご説明しています。
知っておいていただきたいリスク
いちばんお伝えしておきたいのは、糸がゆるんだり外れたりする可能性があることです。糸で支えている以上、年数がたつと効果が弱まり、まぶたの下がりが戻ってくることがあります。
そのほかにも、次のようなリスクがあります。
- 左右差が残る
- 期待したほど開きが変わらない、または開きすぎて見える
- 目の開きが大きくなったぶん、乾きを感じやすくなる
- 糸がまぶたの裏で露出したり、まわりに炎症が起きたりして、痛みが出る
糸が露出したときや、まぶたの裏の炎症が強いときは、糸を取り除く処置が必要になることがあります。
次のようなときは、様子を見すぎず、手術を受けた医療機関に連絡してください。
- 目の痛みが強くなってきた
- ゴロゴロした違和感が続いて、涙や充血が増えてきた
- 腫れや赤みが、日がたつにつれて強くなっている
- 見えにくさが出てきた
保険は使える?費用の考え方

切らない眼瞼下垂手術は、原則として自費診療です。
費用は施設によって幅がありますが、10万円から20万円程度がひとつの目安です。実際の金額は、診察のときに個別にご説明します。
一方、切開をともなう挙筋前転法は、視野がさえぎられるなど機能的な症状があれば、保険適用になることが多い手術です。保険適用(3割負担)の場合、手術費用は両目で35,000円から45,000円程度が目安です。術前の検査や麻酔、薬などを含めた総額は、5万円から6万円程度になることが一般的です。
ここで考えていただきたいことが2つあります。
ひとつめは、費用だけで比べないことです。「切らないから安い」「切るから高い」とは限りません。機能的な症状があるなら、保険適用の手術のほうが費用をおさえられることもあります。
ふたつめは、長い目で見ることです。切らない手術は、糸がゆるんだときに、もう一度手術を考える場面が出てくるかもしれません。1回の金額だけでなく、その可能性も含めて比べてみてください。
あまりに安すぎる、または高すぎる場合は、その理由を詳しく確認することをおすすめします。保険と自費の違いは、こちらの記事で整理しています。
切る手術(挙筋前転法)とどう選ぶか

切らない手術と挙筋前転法で迷ったときは、次の4つの順に考えると整理しやすいと思います。
症状の強さ
最初に確かめたいのは、まぶたの下がり方と、まぶたを開く力です。ここで候補がある程度しぼられます。症状が強い場合は、切らない手術では十分な変化を得にくいことがあります。
効果の続き方
挙筋前転法は、ゆるんだ腱膜を引き出して留め直す手術で、長く続く効果を目指します。切らない手術は糸で支える方法なので、年数がたつと戻ってくる可能性があります。
ダウンタイムと傷跡
挙筋前転法は皮膚を切るので、大きな腫れが引くまでに1〜2週間ほどかかり、自然になじむまでには1ヶ月ほどみておくと安心です。傷跡も残ります。二重の線に重なる位置なので、目立ちにくいことが多いです。切らない手術は、この負担が小さい方法です。
費用と保険
機能的な症状があれば、挙筋前転法は保険適用を検討できます。切らない手術は原則自費です。
どちらにも良い面と気になる面があり、どちらかが正解というものではありません。挙筋前転法の気になる面については、こちらの記事で正直にまとめています。
診察で聞いておきたいこと
カウンセリングでは、次のことを聞いてみてください。遠慮はいりません。
- 私のまぶたは、開く力がどのくらい残っていますか
- 切らない手術で、どのくらいの変化が見込めますか
- 糸がゆるんだり外れたりしたときは、どう対応しますか。費用はかかりますか
- 切る手術を選んだ場合と、何が違いますか
- 保険適用になる可能性はありますか
- 手術を担当するのは、どの医師ですか
はっきり答えてもらえない項目があれば、その場で決めずに持ち帰ってかまいません。初回のカウンセリングで契約を急かすクリニックは避けましょう。
Dr.やなの考え方|方法より先に、原因を確かめます
切らない手術を検討している方にお伝えしたいのは、方法から先に決めないでいただきたい、ということです。
大切なのは、まぶたが下がっている原因に合っているかどうかです。症状が重い方や確実な効果を望む方には、切開式の挙筋前転法をおすすめすることもあります。
一方で、切らない手術が役に立つ場面もあります。高齢の方は、糸の手術は受けられないと思っていることが少なくありません。実際には、高齢の方でも埋没法を応用することは可能です。
余った皮膚が視界をふさいでいる場合には、皮膚を処理することで視野の改善が期待できます。体への負担が少なく、ダウンタイムも短くて済むので、喜ばれることも多い方法です。年齢と手術の関係については、こちらの記事でもお話ししています。
切開が向いている方には、切開をおすすめします。挙筋前転法では、三角目やびっくり目にならないよう、手術中に患者さんにも鏡で確認していただきながら、自然な瞼縁(けんえん:まぶたの縁)のカーブになるよう調整します。保険適用でも、形成外科医として形にこだわりたいと考えています。
高額な手術へのご誘導は一切いたしません。視界の狭さなどの機能的な症状があれば、まず保険適用の治療を検討します。メリットもデメリットも正直にお伝えして、必要最小限の治療をご提案するのが私のモットーです。
よくある質問
切らない眼瞼下垂手術について、よくいただくご質問にお答えしますね。
効果はどのくらい続きますか
何年もつとお約束することはできません。糸で支える方法なので、数年で糸がゆるんで元に戻る方がいらっしゃる一方、経過には個人差があります。戻ってくる可能性があることを、最初から知っておいていただければと思います。
切らない手術のあとで、切る手術に変えることはできますか
切る手術への切り替えを検討することはできます。残っている糸の状態やまぶたの状態を見て判断しますので、以前に受けた時期や、受けた施設がわかるものをお持ちいただけると助かります。
二重の埋没法とは違うのですか
糸を使う点は同じですが、目的が違います。二重の埋没法は線を作ることが目的で、切らない眼瞼下垂手術はまぶたの開きを改善することが目的です。線を作るだけでは、まぶたを開く力は変わりません。
手術をすると、二重の幅は変わりますか
変わることがあります。まぶたの開きが変わると、皮膚の折りたたまれ方も変わるためです。皮膚だけを処理する方法では、二重がはっきりすることもあります。ご希望の見た目があれば、手術の前にお伝えください。
目が開きにくいのは眼瞼下垂だと思うのですが、すぐ手術を決めたほうがよいですか
急いで決める必要はありません。目が開きにくい原因には、皮膚のたるみやむくみなど、眼瞼下垂以外のものもあります。まず原因を確かめてから、手術が必要かどうかを一緒に考えましょう。
まとめ|切らない手術は、まぶたの状態に合うときの選択肢
最後に、この記事の要点を整理します。
- 切らない眼瞼下垂手術は、メスを使わず糸でまぶたの開きを整える、原則自費の手術
- 候補になりやすいのは、程度が軽く、まぶたを開く力が保たれている方
- 程度が強い方や、長く続く効果を優先する方には、挙筋前転法をおすすめすることもある
- ダウンタイムは3日から1週間程度が目安。腫れ、内出血、左右差、乾きなどのリスクがある
- 糸がゆるんだり外れたりして、元に戻る可能性がある
- 機能的な症状があれば、保険適用の治療を先に検討する
「切らない」という言葉だけで決めてしまうと、思っていた結果と違った、ということが起こり得ます。まずは、まぶたが下がっている原因を確かめるところから始めてください。
効果や経過には個人差があります。ここでお伝えした内容は一般的な目安で、実際の判断には診察が必要です。正確な診断は、形成外科・眼科などの専門医にご相談ください。
まぶたのお悩みは、どんな小さなことでもかまいません。「切らない手術が自分に合うのかだけ知りたい」というご相談も大歓迎です。無理な勧誘はいたしませんので、無料相談フォームからお気軽にお声がけください。



