「挙筋前転法を勧められたけど大丈夫なの?」
「この手術で良くなるの?…もし失敗したら」
眼瞼下垂・まぶたのたるみ治療を検討中で、このような不安を抱えていませんか?まぶたの重さや視野の狭さから解放されたいけれど、いざ手術となると躊躇してしまう。その気持ち、よくわかります。
医師からは「効果的な治療法ですよ」と説明されても、デメリットについて十分な説明がないままでは、本当にこれでいいのか迷いますよね。
Dr.やなは日々の診療で、「事前にデメリットを知っていれば…」と後悔する方や、「メリットしか聞いていなくて不安…」と悩む方の相談をたくさん受けてきました。挙筋前転法は確かに良い治療法ですが、他の医療行為と同様にリスクがゼロというわけではありません。
この記事では、挙筋前転法のデメリット8つについて、正直に解説します。あなたが後悔しない選択をするために、納得できる情報をお届けしていきます。
も く じ
Toggle挙筋前転法とは?眼瞼下垂の代表的な手術

挙筋前転法(きょきんぜんてんほう)とは、まぶたを持ち上げる筋肉である眼瞼挙筋の腱膜を、前方に移動させて(前転させて)、まぶたの土台となる瞼板にしっかりと固定し直す手術です。
簡単にいえば、緩んだまぶたの筋肉を縫い直して、下がったまぶたを改善する手術になります。
眼瞼下垂の根本的な原因にアプローチする治療法として、多くの形成外科や美容外科で採用されています。
医師により眼瞼下垂と診断され、視野が狭くなっている、まぶたを開けるのに力が必要で日常生活に支障があるなど、機能的な問題がある場合は美容目的ではなく治療として保険適用となる可能性があります。
切開を伴うため、ダウンタイムは長くなりますが、その分しっかりとした改善が期待できるでしょう。
挙筋前転法のデメリット8つを正直に解説

挙筋前転法は効果的な反面、もちろんデメリットもあります。手術を受けるかどうか判断する前に、リスクをしっかり理解しておくことが大切です。
ここでは、多くの方が不安に感じる8つのデメリットについて、包み隠さずお伝えします。あなたにとって本当に良い選択かどうか、一緒に考えていきましょう。
切開部分の傷跡が目立つ可能性あり
多くの場合、二重のラインに沿って切開するため、傷跡は比較的目立ちにくい傾向ではあります。
体質によっては傷が赤く盛り上がる肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)になることもありますが、まぶたは比較的ケロイドができにくい部位です。一般的には、時間とともに傷跡は白っぽい線として落ち着いていきます。
切開手術である以上、線状の傷跡は残る場合があり、目を閉じたときや光の当たり方によっては、傷跡が見えることもあるでしょう。
まぶたは人の視線が集まりやすい部位なので、特に傷跡が気になる方にはデメリットといえます。
【対策】
形成外科専門医や眼瞼手術の経験が豊富な医師を選ぶことで、傷跡を最小限にできる可能性が高まります。術前のカウンセリングで、医師の症例写真や手術実績を確認することも大切です。
術後は医師の指示に従って保湿や紫外線対策をしっかり行い、傷の治りをサポートしましょう。
※肥厚性瘢痕とは、傷が治る際にコラーゲンなどの組織が過剰に作られることで、傷跡が赤く盛り上がって硬くなった状態のこと。
※ケロイドとは、傷が治る過程で組織が過剰に増殖し、元の傷の範囲を超えて周囲の正常な皮膚にまで広がっていく、赤く盛り上がった傷跡のこと。
術後のダウンタイムが長引く場合あり
手術後のダウンタイムは、想像以上に長く感じる方が多いようです。腫れのピークは手術翌日から2日目頃で、大きな腫れが引くまでに約1~2週間かかります。
軽い腫れやむくみを含めた完全な回復には、3カ月程度を要することもあるでしょう。
「大事な商談があるのに目元が気になる」
「もうすぐイベントなのに腫れが引かない」
といった状況になると、精神的なストレスも大きくなります。
また、抜糸までの約1週間は、患部を直接濡らさないよう注意が必要で、洗顔時には目元を避ける、入浴時は長時間の湯船を避けるなどの配慮が求められます。
日常生活の些細な動作にも気を遣わなければならず、不便さを感じる方が多いでしょう。回復のスピードには個人差があり、予定よりも長引くケースもあります。
【対策】
ダウンタイムが気になる方は、長期休暇や比較的予定の少ない時期を選ぶのがおすすめです。大きな腫れが引くまで約2週間、人前に出やすくなるまで3週間程度を見込んで、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
眼瞼下垂手術後のダウンタイムや回復期間について詳しく知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
左右差や不自然さが残る可能性あり
人の顔は完全に左右対称ではないのですが、挙筋前転法では微妙な調整が求められるため、わずかなズレでも目立ってしまいます。また、まぶたが引き上げられすぎて、驚いた表情に見えてしまう場合もあります。
左右差が気になると、鏡を見るたびにストレスを感じたり、人と目を合わせるのが苦痛になる方も多いでしょう。また、もともと繊細な印象の目元だった方が、手術後に違和感を覚えるケースも見られます。
仕上がりのイメージと実際の結果にギャップがあると、後悔につながりかねません。
【対策】
カウンセリング時に、仕上がりのイメージを医師と丁寧にすり合わせることが重要です。症例写真を見せてもらいながら、どの程度まぶたを持ち上げるか具体的に確認し、納得した上で手術を受けましょう。
再手術は簡単にはできない
思うような結果が得られなかった場合でも、すぐに修正手術ができるわけではありません。
手術直後の傷は赤みを帯び、術後1〜3カ月頃に最も硬くなる傾向です。この状態で無理に再手術を行うと、組織がさらに癒着して、引きつれなどのトラブルを引き起こすリスクが高まります。
再手術が必要になる場合は、まぶたの開きが不十分だったり、逆に開きすぎて目が閉じにくくなるケースです。ただし、修正のタイミングは症状の程度によって異なるため、医師の慎重な判断が必要になります。
気になる症状があっても、すぐに対処できないもどかしさを感じる方は多いでしょう。一度の手術で納得のいく結果を得ることが、いかに大切かがわかります。
【対策】
初回の手術で失敗しないよう、眼瞼下垂の治療を専門に行っている経験豊富な医師を選ぶことが重要です。もし術後に違和感があれば、自己判断せず早めに執刀医に相談しましょう。
一定期間は目が閉じにくくなる場合あり
手術後しばらくは、まぶたの腫れや組織の緊張によって、目が完全に閉じにくくなることがあります。寝ている間も目が少し開いたままになり、朝起きると目がゴロゴロする、乾燥するといった症状が出る方もいます。
術後1カ月程度で腫れが引くにつれて改善する傾向ですが、経過には個人差があり、その間は不快感が続く場合があります。
まぶたを過度に引き上げすぎた場合は、目が閉じにくい状態が続くこともあります。その結果、角膜に傷がつくリスクもあるため、注意が必要でしょう。
【対策】
手術前のカウンセリングで、どの程度まぶたを持ち上げるか慎重に相談しましょう。術後に目が閉じにくい状態が続く場合は、すぐに医師に相談して、点眼薬などで対処することが大切です。
ドライアイや異物感などの可能性がある
術後しばらくの間は、まぶたが開きやすくなり目の露出面積が増えるため、ドライアイの症状が出る場合があります。症状は通常1カ月程度で改善に向かいますが、人によっては数カ月続くこともあるでしょう。
目がショボショボする、ゴロゴロするといった異物感を覚える方もいます。普段からドライアイ気味の方は、症状が悪化するリスクがあるため、注意が必要です。
【対策】
挙筋前転法の術前に、ドライアイの症状や既往歴があれば必ず医師に伝えましょう。術後は、処方された点眼薬をこまめに使い、目の乾燥を防ぐことが大切です。
外出時はサングラスを着用すると、風や紫外線から目を保護でき、乾燥やまぶしさを軽減できます。
術後の腫れや内出血が強く出る場合あり
挙筋前転法は皮膚を切開する手術なので、腫れや内出血は避けられません。術後2日間ほどは腫れが強く出やすく、まぶたが腫れぼったくなります。
腫れの程度は個人差がありますが、泣いた後のような見た目になることが一般的です。青あざのような内出血も1~2週間ほど続く場合もあるでしょう。回復までのおおよその流れは以下の通りです。
- 術後2日間:腫れが最も強く出る時期
- 術後1週間:腫れがある程度改善し、抜糸を行う。抜糸後はアイメイクが可能になる
- 術後2週間:腫れがかなり改善し、人前に出やすくなる
- 術後1~3カ月:残りの腫れが徐々に落ち着き、自然な状態に近づいていく
- 術後3~6カ月:傷跡の赤みも消え、落ち着いてくる
腫れや内出血の程度には個人差があり、体質によっては予想以上に強く出ることもあります。内出血によって、まぶたが青紫色に変色したり、目の下まで広がったりする場合もあるでしょう。
また、血が止まりにくい体質の方や、特定の薬を服用している方は注意が必要です。
【対策】
手術のスケジュールは、仕事や予定を十分に考慮して組みましょう。術後は頭を高くして寝る、術後2日間は保冷剤をガーゼやタオルで包んで患部を冷やすなど、医師の指示に従ったケアを行うことが大切です。
ただし、保冷剤を直接肌に当てると凍傷のリスクがあるため注意が必要です。
二重のラインが変わる・消える可能性あり
まぶたを持ち上げる位置や皮膚の切除量によって、術後の二重ラインが元のラインと異なってしまう場合があります。また、まぶたの形が変化することで、今まで慣れ親しんだ顔の印象が変わる方もいるでしょう。
特に、「視野を広げたいだけで、見た目は変えたくない」と思っている方は要注意です。万一、二重の幅が広くなりすぎたり、左右で形が違ったりすると、違和感が残ってしまいます。
【対策】
カウンセリングで、機能改善だけでなく、二重のラインがどう変わる可能性があるか詳しく説明してもらいましょう。希望する仕上がりのイメージを写真などで共有し、医師と認識を合わせておくことが重要です。
以上、挙筋前転法のデメリット8つについて解説しました。これらのリスクを理解した上で、次の章では、それでもなぜ多くの方に選ばれているのか、その理由をお伝えします。
デメリットはあるけど…挙筋前転法が選ばれる理由

ここまでデメリットをお伝えしてきましたが、それでも挙筋前転法を選ぶ方が多いのには理由があります。
傷跡やダウンタイムといったマイナス面を上回るメリットがあるからこそ、眼瞼下垂の治療法として広く採用されているのです。では、具体的にどのような点が支持されているのでしょうか。
根本的な原因にアプローチできる
挙筋前転法の強みの1つは、眼瞼下垂の根本原因に直接アプローチできる点です。緩んだり外れたりした眼瞼挙筋腱膜を瞼板にしっかりと縫合固定することで、まぶたが本来の力で開く機能の回復を目指します。
他の治療法と比べると、その違いがよくわかります。
たとえば、埋没式挙筋短縮術(切らない眼瞼下垂術)は、皮膚を切開せずに糸で腱膜を固定する方法ですが、糸が緩んだり外れたりするリスクがあり、挙筋前転法に比べて効果の持続性に劣る場合があります。
一方、挙筋前転法は構造そのものの修復を目的とするため、長期的な効果が期待できるのです。
眼瞼下垂は、放置すると徐々に進行していく症状です。一時的な対処ではなく、「一度きちんと治したい」「何度も手術を受けたくない」と考える方にとって、挙筋前転法は理にかなった選択といえるでしょう。
効果が持続しやすい点は、デメリットを上回る大きな安心材料といえます。手術は誰にとっても不安なものですから、一回で済むならそれに越したことはありませんね。
挙筋前転法のほか、まぶたのたるみ手術の種類や具体的な流れなどを知りたい方は、下記の記事が参考になります。
視野が広がり日常生活の質が向上する
まぶたが重くて視野が狭くなると、思っている以上に日常生活に支障が出ます。挙筋前転法で眼瞼下垂を改善すると、視野が広がるだけでなく、以下のような様々な変化が期待できます。
【挙筋前転法で期待できる変化】
- 目が開けづらい状態が改善
- 視界が明るくなり物が見やすくなる
- 頭痛や肩こりの悩みの軽減
- 目の疲れやかすみの改善
- おでこのシワや眉毛を上げる癖の軽減
- まぶたのたるみがすっきりする
※上記は一般的に期待される変化であり、効果を保証するものではありません。
まぶたが正常に開くようになれば、こうした二次的な症状の改善も期待できます。見た目の変化だけでなく、生活の質そのものが向上するのが、この挙筋前転法の魅力の1つといえるでしょう。
保険適用で費用負担を抑えられる場合が多い
挙筋前転法は、条件を満たせば保険適用となる場合が多く、経済的な負担を抑えられます。視野が狭くなっているなど機能的な問題がある場合は、美容目的ではなく治療として認められるケースも多いです。
3割負担であれば、両目の手術でも5万円前後が目安で、自費診療と比べて大幅に費用を抑えられるでしょう。ただし、すべてのクリニックで保険診療を扱っているわけではありません。
また注意点として、美容外科の中には、必要以上に高額な自費治療を勧めてくるところもあるようです。
本来なら保険で治療できるケースでも、「こちらのほうがキレイに仕上がります」と、30万~50万円以上する自費メニューに誘導されることもあるため、注意が必要です。
まぶたの手術で保険適用になるか自費診療になるか、その違いについて気になる方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
まとめ:デメリットも理解した上で専門医に相談を

この記事では、挙筋前転法で考えられるデメリットを中心に解説しました。ただし、リスクばかりに目を向ける必要はありません。適切な知識をもって臨めば、眼瞼下垂やたるみの改善が十分に期待できる治療法です。
そして、手術を受けるかどうかを決める際に、重要なポイントがあります。それは「どの医師に執刀してもらうか」です。
まぶたの手術は繊細で、医師の技術や経験によって仕上がりが大きく変わります。以下に、信頼できる医師を見極めるポイントを記載しますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
【信頼できる医師を見極めるポイント】
- 眼瞼下垂の治療実績が豊富である
- カウンセリングで話をじっくり聞いてくれる
- 保険適用の可能性を正直に説明してくれる
- 高額な自費治療を無理に勧めてこない
- デメリットを包み隠さず伝えてくれる
- 術後のフォロー体制がしっかりしている
大手クリニックだから安心という考え方は危険です。ブランド名ではなく、実際に執刀する医師の経験と専門性を確認しましょう。カウンセリングで少しでも違和感を覚えたら、セカンドオピニオンを求めることも大切です。
信頼できる名医を見極めるための具体的なチェックポイントについて知りたい方は、下記の記事が参考になります。
Dr.やなの監修コメント
挙筋前転法には、傷跡やダウンタイム、再手術の難しさなど、いくつかのデメリットが伴います。しかし、これらは適切な技術を持った医師が執刀し、患者さん自身が術後のケアをしっかり行うことで、多くの場合は最小限に抑えることができます。
私が診療の中で大切にしているのは、患者さんが後悔しない選択をできるようサポートすることです。
デメリットを隠して手術を勧めることは決してしません。むしろ、起こりうるリスクを丁寧に説明し、その上で患者さんが「それでも受けたい」と思えるかどうかを一緒に考えます。
眼瞼下垂の治療では保険適用できるケースも多いです。視野障害や日常生活への支障といった機能的な問題があるなら、まずは保険診療の可能性を確認すべきでしょう。くれぐれも、高額な自費治療への誘導には注意してください。
最後になりますが、あなたの悩みに真摯に向き合い、適切な治療法を提案する医師を見つけることが大切です。不安なことや疑問に思うことは、私でよければ遠慮せず相談してくださいね。



