目元の若見えなど、印象改善を期待して受ける脱脂や脂肪注入。しかし、手術後に「あれ?しこりのような硬さを感じる…」という経験をする方が見られるのは事実です。
美容整形のトラブルは友人や家族にも打ち明けにくく、1人で悩みを抱えてしまいがちです。「失敗だったのかも…」「誰に相談していいか…」、モヤモヤした気持ちを抱えたまま過ごしている方もいるでしょう。
形成外科専門医のDr.やなは、他院で脱脂や脂肪注入をした方からの相談を受けるたび、しこりなどのリスクを理解するための情報が、十分に届いていないことを残念に思っています。
この記事では、脱脂や脂肪注入後に起こり得るしこりのトラブルについて、簗(やな)医師監修のもと、信頼できる情報をお届けします。
すでに不安を抱えている方にも、これから手術を考えている方にも、参考になる内容をお届けします。
も く じ
Toggle脱脂・脂肪注入後のしこりは失敗なのか?

結論からお伝えすると、しこりができたからといって必ずしも失敗ではありません。手術後の正常な治癒過程で、一時的にしこりが生じることは珍しくないのです。
ただし、中には注意が必要なしこりもあるため、原因や症状をきちんと理解しておくことが大切です。
術後のしこりは珍しくない自然な反応
脂肪を注入した後、体はその脂肪を「異物」として認識し、周囲の組織が反応を起こします。
この段階では、触るとコリコリとした感触があったり、見た目にわずかな凹凸を感じることがあります。
多くの場合、術後2~3カ月程度で徐々に柔らかくなり、自然になじんでいきます。そのため、手術直後や数週間の時点でしこりがあっても、過度に心配しすぎる必要はないでしょう。
ただし、時間が経っても改善しない場合や、症状が悪化する場合は、別の原因が隠れている可能性があります。
しこりができる主な原因を知っておく
では、なぜしこりができてしまうのでしょうか?原因を理解しておくと、自分の状態を判断する際の参考になります。
【しこりができる主な原因】
- 脂肪の定着不良による壊死
注入した脂肪の一部が血流不足で壊死し、硬い塊として残る - 脂肪の塊が大きすぎる
一度に大量の脂肪を注入すると、塊のまま残りやすくなる - 内出血が血の塊として残る
手術時の出血が吸収されず、しこりのように感じられる - 注入した脂肪に不純物が混じる
脂肪を採取・精製する際の処理が不十分だと、不純物が残る - 細菌感染が起きている
傷口から細菌が入り、赤み・痛み・発熱などの症状を引き起こす - 注入の技術が未熟
脂肪を注入する層や量の判断が適切でないと、しこりが生じやすい
また、複数の原因が重なっているケースもあるため、医師による診断が重要になるでしょう。
しこりは自然に治る?経過観察と受診の目安

脱脂や脂肪注入後にしこりができると、「このまま放っておいていいの?」「すぐに病院へ行くべき?」と迷ってしまいますよね。
ただし、中にはすぐに医師の診察が必要なケースもあるため、どのような症状なら様子を見てよいのか、どんな兆候が出たら受診すべきなのかを知っておくことが大切です。
経過観察でよいと思われるケース
では、具体的にどんな状態なら経過観察の対象となるのでしょうか?
【経過観察でよいと思われるケース】
- 術後1~3カ月以内のしこり
- 徐々に柔らかくなっている
- 触っても痛みがほとんどない
- 日に日に小さくなっている
- 赤みや腫れ、熱感がない
- 見た目に大きな凹凸がない
※あくまで一般的な目安です。
経過観察でよいと思われるケースでも、自己判断だけで様子を見るのではなく、一度は施術を受けた医師に診てもらうことをおすすめします。
すぐに受診すべきケース
反対に、どのような症状が出たらすぐに医師に相談すべきなのでしょうか?
【すぐに受診すべきケース】
- しこりが大きくなっている
- 触ると強い痛みがある
- 赤く腫れている、熱を持っている
- 膿が出ている
- 術後3カ月以上経ってもしこりが硬いまま
※あくまで一般的な目安です。
すぐに受診すべきケースでは、脂肪の壊死や感染、過剰な脂肪注入などが原因となっている場合もあるため、注意が必要です。
脱脂・脂肪注入後のしこりは修正できる?

結論からいうと、しこりの修正は可能です。ただし、状態によること。また、しこりの原因や大きさ、硬さなどによって修正方法は異なります。
修正のタイミングや医師の技術によって結果が大きく変わるため、慎重に判断することが大切です。
しこりの状態に応じた修正方法の種類
では、具体的にどのような修正方法があるのでしょうか?
【主な修正方法】
- 穿刺吸引
注射針で小さな穴を開け、液状化したしこりや血腫を吸引する方法 - 外科的除去(摘出手術)
硬く大きなしこりをメスで切開して除去する方法で、傷跡が残る場合もある - カムフラージュ治療
凹凸を目立ちにくくするため、ヒアルロン酸などで周囲を整える - 脂肪の再注入
しこりを除去した後、脂肪を注入し直してバランスを調整する - 経過観察(保存的治療)
術後2〜3カ月程度は正常な経過として硬さを感じることがあるため、炎症症状がない場合は時間とともに柔らかくなる可能性を考慮する
※状態によって複数の方法を組み合わせる場合もあります
脂肪の壊死や感染が原因のしこりは、放置すると症状が悪化する場合があるため、早めの受診が推奨されます。
一方、修正が難しいケースとしては、広範囲に脂肪が癒着している場合や、何度も修正を繰り返して組織がダメージを受けている場合が挙げられます。
くれぐれも、どの修正方法が適しているかは、医師の診察で判断されます。
修正を受けるタイミングと注意点
まず、修正手術を受けるタイミングについてです。
一般的に、術後3カ月以降に組織が安定してから修正することが多いです。
手術直後は腫れや炎症が残っているため、最終的な状態を判断しにくい場合があります。ただし、感染や強い痛みがある場合は、早急な処置が必要になるでしょう。
※しこりの状態や再注入の場合は3〜6カ月程度待つことが推奨されるケースもあります。
次に、どこで修正を受けるかという問題です。
施術を受けたクリニックに相談するのも1つですが、対応が不誠実だったり、追加費用を請求されるケースもあります。技術不足などが原因によるしこりの場合は、安心して任せられるかどうかの不安もあるでしょう。
その場合は、セカンドオピニオンとして別のクリニックでも診察を受けることも検討しましょう。別の医師の意見を聞くことで、より客観的に自分の状態を把握しやすくなります。
また、修正手術は最初の手術よりも難易度が高い傾向です。すでにダメージを受けた組織を扱うため、経験のある医師による施術が望ましいでしょう。
修正にかかる費用や期間
修正にかかる費用は、クリニックや修正の範囲・難易度によって大きく異なります。
穿刺吸引は比較的負担が少ない処置、外科的除去は切開を伴う手術、脂肪の再注入は採取から注入まで含む施術となります。具体的な費用については、個々の状態を説明した上で、各クリニックにご確認ください。
元のクリニックが保証制度を設けている場合、無料または割引で対応してくれることもあるでしょう。
修正にかかる期間も、症状の程度や方法によって異なります。穿刺吸引は1回で終わることもありますが、外科的除去の場合は術後の経過観察を含めて数カ月を要する場合もあります。
ダウンタイムについても考慮が必要です。再手術の場合、腫れや内出血が最初の手術よりも長引く場合があるため、仕事や予定への影響も考えておきましょう。
修正を任せる医師選びの重要性
先ほども触れましたが、修正を任せる医師選びが何より重要です。脂肪注入の修正は高度な技術を要するため、執刀医の経験や専門性が結果を大きく左右します。
- 脂肪注入やしこり修正の経験が豊富か
- 症状に対してどんな修正方法の提案があるか
- リスクやデメリットもきちんと説明があるか
といった点を確認してみてください。
後悔を繰り返さないためにも、焦らず慎重に信頼できる医師を選ぶことが何より重要になります。
しこりを防ぐために!手術前チェックリスト

これから脱脂や脂肪注入を検討している方へ。しこりのリスクを完全になくすことはできません。しかし、事前の準備と適切なクリニック選びによって、その可能性を大きく減らすことは可能です。
多くのしこりは、術後2~3カ月程度で少しずつ柔らかくなり、自然になじんでいく傾向ですが、失敗や技術不足によるものはできるだけ避けたいですよね。
「高額な費用を払ったのに…」という事態を避けるためには、手術を受ける前の段階がとても重要になります。
クリニック選びで必ず確認したいポイント
手術を受ける前に、クリニックや医師について以下の項目をチェックしてみましょう。これらを確認することで、しこりだけでなく、様々なリスクも同時に軽減できるでしょう。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 医師の経験と専門性 | 形成外科専門医か、まぶた治療の経験が豊富か |
| 症例写真の確認 | 実際の仕上がりイメージを複数見せてもらえるか |
| カウンセリングの質 | 執刀医自身がじっくり話を聞いてくれるか |
| 施術方法の説明 | 脂肪の採取から注入までの工程を明確に説明してくれるか |
| リスクの説明 | しこりなどの失敗例やデメリットも正直に伝えてくれるか |
| アフターケア体制 | 術後のトラブル時にすぐ対応してもらえる体制があるか |
| 料金の透明性 | 総額が事前に明示され、追加費用の有無が明確か |
| 修正対応の可否 | しこりができた場合の対処法や保証制度があるか |
このチェックリストを活用することで、客観的に判断できます。どれか1つでも不安な点があれば、別のクリニックも検討してみましょう。
しこりのリスクを減らすには、執刀医の技術力が何より重要です。脂肪の採取方法、精製の丁寧さ、注入する層や量の判断…これらすべてが、仕上がりの質を左右するのです。
価格が安いからといって安易に決めてしまうと、経験の浅い医師に当たるなど、結果的に修正費用がかさむ可能性もあります。目先の安さではなく、長期的に見て納得のいく選択をすることが、後悔を防ぐ第一歩になるでしょう。
また、遠慮せずに疑問点を質問し、納得できるまで説明してもらってください。
後悔しないための最終チェックと心構え
手術を受ける前に、もう一度冷静に考えてみてください。焦って決断すると、後になって「もっとちゃんと調べておけばよかった…」と後悔することになりかねません。
カウンセリングは、医師の人柄や方針を見極める大切な機会であり、手術の疑問点や不安を解消する場です。「こんなこと聞いたら恥ずかしいかな」と遠慮する必要はありません。
あなたの体に関わる大切な決断ですから、納得いくまで質問する権利があります。もし医師が面倒くさそうな態度を取るようなら、そのクリニックは選ばないほうが賢明でしょう。
そして、100%成功する保証はないことも理解しておきましょう。どんなに腕の良い医師でも、個人の体質や治癒力によって結果が変わることがあります。
大切なのは、万が一のトラブル時にきちんと対応してくれる医師を選ぶことです。事前の準備を怠らず、信頼できる執刀医と出会えたなら、きっと満足のいく結果に近づけるでしょう。
まとめ:しこりの不安は1人で抱えこまない

脱脂や脂肪注入の手術後にしこりができてしまったとき、一番つらいのは「誰にも言えない」という孤独感かもしれません。周囲に相談せず、「自分で決めたことだから…」と考え込んでしまう方がよく見られます。
すでに悩んでいる方は「自分を責めない」ことを大切にしてほしいと思います。手術を受けた決断も、クリニックを選んだことも、その時のあなたなりの選択だったはずです。
今できることは、現状を冷静に見つめて、次のステップを考えることです。施術を受けたクリニックへの相談はもちろん、対応に不安があるなら別の医師の意見を聞くことも全く問題ありません。
【具体的なアクション】
- 今の症状を写真に記録しておく(経過を確認する材料になる)
- 気になる点をメモして整理する(相談時に伝えやすくなる)
- 家族や親しい友人に打ち明けてみる(一人で悩まない)
- 相談先の候補となるクリニックを2~3カ所リストアップする
そして、これから手術を検討している方へ。他の人の失敗例を知ることは、決してネガティブなことではありません。
むしろ、起こり得るリスクを理解した上で準備を整えることが、満足のいく結果につながります。焦らずにじっくりと情報を集め、心から信頼できる医師に出会ってください。
あなたの不安が少しでも軽くなり、前を向いて歩き出せることを心から願っています。
脱脂について、手術の種類や具体的な流れ、費用の目安を基礎から知りたい方には、下記の記事が参考になります。
また、しこりのほか、クマ取りを受けた後にしわが増えたとお悩みの方も見られます。失敗の原因を知り、信頼できる医師の選び方も含めて知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
形成外科Dr.やなの監修コメント
しこりの症状が出てから何カ月も1人で悩み、ネットで情報を探し続けて、精神的に追い詰められている方が少なくありません。
そんな方に医師の立場からお伝えしたいのは、しこりは早期に適切な診断を受ければ対処しやすいということです。
「様子を見るべきか」「すぐ治療すべきか」、この判断は専門的な知識がないと難しい部分があります。特に感染が疑われる場合、時間が経つほど治療が複雑になる可能性もあるでしょう。
また、施術を受けたクリニックでの修正をためらう気持ちもわかります。その際は、セカンドオピニオンの選択肢があることを知ってほしいです。
むしろ、客観的な診断を得るために別の医師に診てもらうことは、とても賢明な判断だと思います。
私自身、他院で受けた手術の修正相談をよく受けてきました。あなたの不安に寄り添いながら、今の状態で何ができるのかを一緒に考えていきます。遠慮なくご相談ください。

