「まぶたが重い」「視界が狭くなった」というお悩みで受診される方が増えています。多くの方が気になるのが、眼瞼下垂の手術にかかる費用、特に「保険は適用されるのか」という点です。
実は、眼瞼下垂やまぶたのたるみの治療は、症状や治療法によって保険適用になる場合と自費診療になる場合があります。この違いを正しく理解することで、適切な治療選択と費用の準備ができるようになります。
多くの患者さんから「美容外科で高額な見積もりを出されたけれど、本当にそれが必要なのか分からない」という相談を受けることがあります。私は形成外科医として、無理な美容整形ではなく、低価格・保険適用で本当に必要な治療を選んでいただくための情報提供を大切にしています。必要以上の治療や費用負担を勧めることなく、患者さん一人ひとりに適した選択肢をご提案することが私の理念です。
今回は、眼瞼下垂やまぶたの手術における保険診療と自費診療の違いについて、専門医の立場から詳しく解説します。
も く じ
Toggle眼瞼下垂の保険適用条件|本当に適用されるケースとは

眼瞼下垂は単なる見た目の問題ではなく、視機能に影響を与える可能性がある疾患として認識されています。そのため、一定の条件を満たせば健康保険が適用される「保険診療」として治療を受けることができます。
保険適用となる具体的な条件
眼瞼下垂手術が保険適用となるためには、以下の条件を満たす必要があります:
- 視野(見える範囲)に障害がある
- まぶたが下がって上方視野が制限されている
- 物が見づらいという自覚症状がある
- 眼瞼下垂の程度が一定以上である
- MRD(Marginal Reflex Distance):角膜反射点から上まぶたまでの距離が2mm以下
- 上眼瞼挙筋機能:上を見上げた時のまぶたの動きが弱い(8mm以下)
- 医師による眼瞼下垂の診断がある
- 形成外科医や眼科医による専門的な診察での診断が必要
保険適用にならないケース
以下のようなケースでは、一般的に保険適用にならず自費診療となります:
- 視機能に影響がない軽度のまぶたのたるみ
- 主に美容目的の手術(例:二重まぶた形成など)
- 目の下のたるみやクマの治療
- 上記の保険適用条件を満たさない場合
注意点
眼瞼下垂の保険適用は医師の診断によるため、同じ症状でもクリニックによって判断が異なる場合があります。特に美容外科では保険診療を行っていない場合も多いため、形成外科や眼科の専門医を受診することをおすすめします。
診察時のポイント|保険適用の可能性を高めるために

保険適用の可能性を適切に判断してもらうために、診察時には以下のポイントを意識しましょう。
事前に準備しておくこと
- 日常生活での不便さをメモしておく
- まぶたの重みで視界が狭くなる時間帯や状況
- 読書や運転などの具体的な場面での困難さ
- 頭痛や肩こりなどの随伴症状
- 以前の写真を持参する
- まぶたの状態が年齢とともに変化した証拠として
- 若い頃と現在の違いが分かる写真があるとベスト
診察時に医師に伝えるべきこと
- 機能的な問題を具体的に説明する
- 「見た目が気になる」ではなく「上が見えにくい」など
- 「夕方になると特に目が開けづらい」など具体的な症状
- 日常生活への影響を伝える
- 運転中の視界の問題
- 仕事や家事での支障
- まぶたを指で持ち上げると見えやすくなるかどうか
- 他の症状があれば伝える
- 頭痛や肩こりの有無
- 疲れやすさ
- 目の乾燥感
医師の診察でチェックされる内容
- MRD測定:まぶたの下がり具体的な数値化
- 挙筋機能検査:まぶたを動かす筋肉の機能評価
- 視野検査:まぶたによる視野障害の程度確認
これらの検査結果をもとに、保険適用の可否が判断されます。検査の際には、リラックスした自然な状態を保つことが重要です。無意識に眉を上げて目を開こうとすると、正確な評価ができなくなる可能性があります。
保険診療と自費診療の手術内容の違い

保険診療と自費診療では、手術の目的や方法、そして結果に違いがあります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った選択をしましょう。
保険診療の手術
- 主な目的
- 視機能の改善
- まぶたの開きを良くする
- 手術方法
- 主に「眼瞼挙筋短縮術」や「眼瞼挙筋前転法」
- まぶたを持ち上げる筋肉(挙筋)を強化する手術
- 特徴
- 医学的に必要な治療として保険適用
- 二重のデザインなど美容的な要素は二次的
- 基本的には機能改善が主目的
自費診療の手術
- 主な目的
- 見た目の改善
- 若々しい印象への変化
- 理想的な二重ラインの形成
- 手術方法
- 眼瞼下垂修正と美容的な要素を組み合わせた手術
- 患者の希望に応じたデザインが可能
- 部分切開や全切開など様々な方法が選択可能
- 特徴
- 患者の希望に応じたデザインが可能
- より細かい美容的な調整が可能
- 保険診療より手術時間や処置が長くなる場合がある
技術的な違い
比較ポイント | 保険診療 | 自費診療 |
---|---|---|
切開範囲 | 必要最小限 | 美容効果を考慮した範囲 |
縫合方法 | 基本的な縫合 | 細かい調整が可能 |
脂肪処理 | 基本的に行わない | 必要に応じて調整 |
二重ライン | 自然な形成が中心 | デザイン重視 |
アフターケア | 基本的なケア | より丁寧なケア |
保険診療で行う手術も形成外科専門医が行えば、機能改善だけでなく、自然で美しい仕上がりを目指すことができます。私も美容自費にかかわらず、自然の仕上がりになるように心がけています。しかし、特定のデザインやこだわりがある場合は、自費診療をお願いすることもあります。
料金比較|保険診療と自費診療の具体例

実際の費用面での違いを、具体的な例で見ていきましょう。
保険診療の場合(両眼の手術)
- 3割負担の場合:約3〜5万円
- 1割負担の場合:約1〜2万円
- 入院の場合:入院費用が別途必要(1〜2泊程度)
※保険診療の場合、患者さんの負担割合によって金額が変わります。基本的には全国どこで手術を受けても治療費用は同じになります。
自費診療の場合(両眼の手術)
- 一般的な眼瞼下垂手術:約15〜30万円
- 二重形成を含む場合:約25〜40万円
- 目の下も同時に治療:約35〜60万円以上
※自費診療の場合、クリニックによって料金設定は大きく異なります。また、麻酔料や処方薬、術後の診察料が別途かかる場合もあるため、総額を確認することが重要です。
具体例:60代女性の場合
Aさん(65歳・女性)の例:
- 症状:両眼の眼瞼下垂、視界の上部が見えにくい
- 保険診療での費用:3万2,000円(3割負担)
- 自費診療での見積もり:28万円
- 選択:保険診療を選択。機能改善と共に自然な二重にもなり満足
具体例:40代男性の場合
Bさん(45歳・男性)の例:
- 症状:やや軽度の眼瞼下垂、まぶたのたるみが気になる。傷跡の仕上げりにこだわりたい
- 保険診療:条件を満たさず適用外と判断
- 自費診療での費用:18万円
- 選択:自費診療を選択。傷が目立たない「男性らしい」自然な仕上がりに満足
保険or自費どちらを選ぶべきか|判断基準とアドバイス

眼瞼下垂治療において保険診療と自費診療のどちらを選ぶべきか、その判断基準について解説します。
保険診療を検討すべき方
- 視機能に明らかな影響がある
- 上方視野が制限されている
- 日常生活で視界の問題を感じる
- 費用を抑えたい
- 適応基準を満たせば、自費診療より大幅に安価
- 医学的必要性が高い
- 加齢や先天的要因による本格的な眼瞼下垂がある
- 眼瞼挙筋の機能低下が明確
自費診療を検討すべき方
- 美容的な仕上がりにこだわりがある
- 二重のデザインやラインにこだわりたい
- より若々しい印象を重視したい
- 保険適用の基準を満たさない
- 診察した医師の判断
- 主に美容目的の場合
- 治療範囲の自由度を希望
- 目の下のたるみなども同時に治療したい
- より総合的な目元の若返りを希望
選択の際の注意点
- 必ず複数の医療機関を比較する
- 特に保険適用の判断は医師によって異なる場合がある
- 形成外科専門医のいるクリニックを優先的に検討
- 術後の仕上がりについて具体的に相談
- 保険診療でも「自然な二重」になる可能性は高い
- 写真やイメージの共有が大切
- 総費用を確認
- 手術費用だけでなく、術後の通院費用も含めた総額
- 追加料金の有無を事前に確認
- 医師の眼瞼下垂手術の実績を確認
- 保険診療でも自費診療でも、医師の経験値が重要
- 症例写真の確認は必須
Dr.やなのアドバイス
眼瞼下垂の症状がある方は、まず形成外科専門医の診察を受け、保険適用の可能性を確認することをおすすめします。保険診療でも、経験豊富な医師であれば機能改善と共に自然で美しい仕上がりが期待できます。
私は「無理な美容整形ではなく、低価格・保険適用で本当に必要な治療を選んでいただく」ことを理念としていますので、症状に応じた最適な治療法をアドバイスしています。必要以上の自費診療を勧めるのではなく、適切な保険診療の可能性を常に検討します。
一方、より美容的な要素を重視する場合や、保険適用の基準を満たさない場合は、自費診療も検討の価値があります。この場合も、眼瞼下垂治療の経験が豊富な形成外科専門医を選ぶことが大切です。
最終的には、ご自身の症状や希望、予算に合わせて最適な選択をしましょう。納得のいくまで医師と相談することが、満足度の高い治療結果につながります。
まとめ

眼瞼下垂の治療において、保険診療と自費診療にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
- 保険診療は、視機能障害のある眼瞼下垂に適用され、費用を抑えて必要な治療を受けられる大きなメリットがあります。
- 自費診療は、美容的なこだわりや保険適用外の症状に対応でき、より自由度の高い治療が可能です。
どちらを選ぶにしても、眼瞼下垂治療の経験豊富な形成外科専門医による診察と治療が望ましいでしょう。特に、保険診療の可能性を最初に検討することで、不必要な出費を抑えることができます。
私は埼玉、東京、千葉の11院で診察・手術を行っており、患者さん一人ひとりの症状と希望に合わせた最適な治療プランをご提案しています。まずは相談だけでも構いませんので、お近くの診療院でお気軽にご相談ください。