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【医師監修】女性に多い目の下のクマの原因と対策|タイプ別解説

「化粧をしても隠れない目の下のクマ」「いつも疲れたように見られる」「若い頃にはなかったクマが気になり始めた」—こうした悩みを抱える女性は非常に多いものです。

目の下のクマは、見た目の印象を大きく左右するだけでなく、時には健康状態の重要なサインとなることもあります。特に女性の場合、ホルモンバランスの変化やライフステージによる影響を受けやすく、男性とは異なる原因でクマが生じることも少なくありません。

私(Dr.やな)は形成外科専門医として多くの女性の目元治療に携わってきましたが、クマの原因を正しく理解することが、効果的な対策の第一歩だと実感しています。本記事では、特に女性に焦点を当て、目の下のクマの原因とそれぞれに合った対策について詳しく解説します。

目の下のクマの3つの種類|あなたのクマはどのタイプ?

目の下のクマは、見た目や原因によって主に3つのタイプに分類されます。まずは自分のクマのタイプを知ることから始めましょう。

青クマ(血管性のクマ)

見た目の特徴:

  • 青みがかった暗い色調
  • 皮膚が薄い部分に特に目立つ
  • 疲れた時や睡眠不足の時に悪化する傾向

主な原因:
青クマは、目の下の皮膚が薄くなることで、その下を走る血管が透けて見えることで生じます。女性は男性と比較して皮膚が薄い傾向があるため、特に青クマができやすいと言えます。

女性に特有の青クマの原因

  • エストロゲン(女性ホルモン)の減少:
    加齢やホルモンバランスの変化により皮膚が薄くなる
  • 妊娠中の循環器系の変化:
    血液量の増加や静脈圧の上昇による血管の拡張
  • 生理前のホルモン変動:
    むくみや水分貯留により血管が目立ちやすくなる
  • 鉄分不足・貧血:
    女性に多い貧血による酸素運搬能力の低下と血管拡張

2. 茶クマ(色素沈着性のクマ)

見た目の特徴:

  • 茶色や黄褐色のシミのような色調
  • メラニン色素の沈着による変色
  • 紫外線を浴びると悪化する傾向

主な原因:
茶クマは、メラニン色素が過剰に生成されることで生じます。女性はメラニン色素の生成が活発な傾向があり、特にホルモンバランスの変化によって色素沈着が起こりやすくなります。

女性に特有の茶クマの原因

  • 女性ホルモンの変動:
    妊娠、出産、生理周期によるメラニン生成の増加
  • 紫外線による色素沈着:
    日焼け止めを塗らない目元への紫外線ダメージ
  • メイクやスキンケア製品の刺激:
    不適切なメイク落としや強い擦り洗いによる炎症後色素沈着
  • 光老化:
    長年の紫外線暴露による真皮の変化と色素沈着

3. 黒クマ(陰影性のクマ)

見た目の特徴:

  • 目の下のくぼみによる影
  • 特に光の当たり方によって目立つ
  • 加齢とともに悪化する傾向

主な原因:
黒クマは、目の下の脂肪や組織の減少、または下垂によってくぼみができ、その陰影が暗く見えることで生じます。

女性に特有の黒クマの原因

  • 加齢による眼窩脂肪の減少:
    40代以降の女性ホルモン低下に伴う脂肪組織の減少
  • 急激な体重減少:
    過度なダイエットによる顔の脂肪喪失
  • 眼窩脂肪の下垂:
    加齢やコラーゲン・エラスチンの減少による支持組織の緩み
  • 表情筋の衰え:
    目の周りの筋肉(眼輪筋)の衰えによる凹凸の強調

多くの場合、これらのタイプが複合的に現れることも珍しくありません。また、年齢によってクマのタイプが変化することもあります。

女性に多い目の下のクマの7つの原因

女性特有の生理的・生活習慣的な要因も含め、目の下のクマの主な原因を詳しく解説します。

1. ホルモンバランスの変化

女性のライフステージに伴うホルモン変動は、クマの形成に大きく影響します。女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンの変化は、皮膚の厚み、血管の拡張、水分バランス、そしてメラニン生成にまで影響を及ぼします。

ホルモンバランスが及ぼすクマへの影響

  • 月経周期:
    生理前(黄体期)はプロゲステロンの影響で水分貯留が起こり、むくみやすくなります。これにより皮下の血管が拡張し、青クマが目立ちやすくなります。また、この時期はコルチゾールの分泌も増加し、毛細血管の透過性が高まるため、目の周りの組織が敏感になります。
  • 妊娠中:
    エストロゲンとプロゲステロンの増加により、メラニン色素の生成が活発になり、茶クマができやすくなります。特に妊娠マスク(肝斑)と同様のメカニズムで、目の下にも色素沈着が生じやすくなります。また、血液量の増加(最大50%増)により静脈圧が上昇し、青クマも悪化しやすいです。
  • 授乳期:
    プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)の影響とエストロゲンの低下により、皮膚の乾燥や張りの低下が生じます。加えて、睡眠不足やストレス、栄養の偏りが生じやすく、全てのタイプのクマが悪化する可能性があります。
  • 更年期:
    エストロゲンの急激な減少(40代後半〜50代)によりコラーゲンやヒアルロン酸の生成が減少し、皮膚が薄くなって青クマができやすくなります。皮膚の厚みは閉経後5年で最大30%減少するという研究もあります。また、脂肪の減少と再分布により黒クマも目立ちやすくなります。

2. 遺伝的要因

クマの出やすさには、遺伝的な要素も大きく関わっています。遺伝子は皮膚の構造や色素沈着の傾向、顔の骨格など、クマに関連する多くの特性を決定づけています。特に女性は親から受け継いだ遺伝的特徴が目元に表れやすい傾向があります。

遺伝的要因が及ぼすクマへの影響

  • 皮膚の薄さ:
    遺伝的に皮膚が薄い方は、真皮層のコラーゲン密度が低く、表皮から血管までの距離が短いため、青クマができやすい傾向があります。特に東アジア系や北欧系の女性に多く見られます。
  • 色素沈着のしやすさ:
    メラニン生成を制御するMC1R遺伝子やTYR遺伝子の特定のバリエーションを持つ方は、紫外線や炎症に対する色素沈着反応が強く、茶クマができやすい傾向があります。中東系、南アジア系、地中海系の女性に顕著です。
  • 骨格の特徴:
    眼窩(目の周りの骨)の形状や突出度合いは遺伝によって決まります。特に眼窩下縁(目の下の骨)が後退している場合や、頬骨の位置が低い場合は、目の下に自然な陰影ができやすく、黒クマが目立ちます
  • 脂肪の分布:
    眼窩周囲の脂肪分布パターンは遺伝的要素が強く、目の下の脂肪層が薄い方は、黒クマができやすい傾向があります。また、脂肪組織の配置によって、特定のタイプのクマができやすいかどうかが決まることもあります。
  • 血管の配置と透過性:
    皮下の血管ネットワークの密度や配置、血管壁の透過性も遺伝的要素が影響し、特に血管が表層に多い方は青クマが出やすくなります

家族内で同じようなクマの特徴が見られる場合は、遺伝的要因が強いと考えられます。例えば、母親と娘で同じタイプのクマが出る傾向があります。ただし、遺伝的素因があっても、生活習慣の改善や適切なケアによって症状を軽減することは可能です。

3. 睡眠不足・疲労

現代女性の多くが抱える睡眠不足や慢性疲労は、クマを悪化させる大きな要因です。日本人女性の平均睡眠時間は6時間22分と、先進国の中でも最も短いと言われており、特に子育て世代の女性は深刻な睡眠負債を抱えていることが多いのが現状です。

睡眠不足・疲労が及ぼす、クマへの影響

  • 血行不良:
    睡眠不足により副交感神経の働きが低下し、末梢血管の収縮が起こります。これにより目の周囲の血行が悪くなり、静脈血のうっ滞が生じて青クマが目立ちます。特に女性は男性に比べて基礎体温が低い傾向があり、血行不良の影響を受けやすいとされています。
  • むくみ:
    疲労によるリンパの流れの停滞と、腎臓での水分再吸収の増加により、目の下がむくみやすくなります。女性ホルモンの影響で女性は男性より水分を保持しやすい体質であるため、このむくみが目立ちやすくなります。このむくみは朝起きた時に特に顕著で、「朝のパンダ目」と呼ばれることもあります。
  • コルチゾール増加:
    ストレスや睡眠不足によりコルチゾール(ストレスホルモン)が増加します。コルチゾールは血管透過性を高め、炎症反応を促進すると同時に、メラニン生成を活性化するため、青クマと茶クマの両方を悪化させます。女性はストレスに対するコルチゾール反応が男性より強いという研究結果もあります。
  • 組織の修復不足:
    睡眠中、特にノンレム睡眠の深い段階で分泌される成長ホルモンは、組織修復と細胞再生を促進します。睡眠不足はこの重要なプロセスを妨げ、皮膚の薄化や弾力低下を招きます。女性は男性に比べて深いノンレム睡眠の割合が少ない傾向があり、この影響をより受けやすいとされています。
  • ヒアルロン酸減少:
    慢性的な睡眠不足は皮膚内のヒアルロン酸合成を低下させ、保湿力と弾力の低下をもたらします。これにより皮膚が薄く見え、血管が透けやすくなることで青クマが強調されます。
  • 活性酸素の増加:
    疲労と睡眠不足は体内の酸化ストレスを増大させ、活性酸素の生成を促進します。これが皮膚のコラーゲン繊維を損傷させ、目元の弾力低下と色素沈着を促進します。

特に出産後や小さなお子さんがいる女性、仕事と家庭の両立で忙しい女性に顕著に見られる原因です。厚生労働省の調査によると、30〜40代の女性の約70%が「慢性的な疲労感」を抱えているとされ、その多くが睡眠の質の低下を伴っています。

4. 栄養バランスの偏り・貧血

女性に多い鉄分不足や偏った食生活もクマの原因となります。厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、日本人女性の約75%が推奨される鉄分摂取量に達していないとされ、特に20代女性の約40%が「鉄欠乏性貧血」または「潜在性鉄欠乏」の状態にあると報告されています。また、過度なダイエット志向や多忙による不規則な食生活も、女性特有の栄養問題として目元に影響を与えています。

栄養バランスの偏り・貧血が及ぼすクマへの影響

  • 鉄欠乏性貧血:
    月経による鉄分の損失(月経1回あたり約20〜30mgの鉄が失われる)や、ダイエットなどによる鉄分摂取不足は貧血を引き起こします。貧血状態では赤血球のヘモグロビン量が減少し、酸素運搬能力が低下するため、組織への酸素供給を補うために血管が拡張します。この拡張した血管が皮膚を通して見えることで、青クマが目立つようになります。特に女性は月経があるため、男性の1.5〜2倍の鉄分が必要とされています。
  • ビタミンC・E不足:
    抗酸化作用のあるビタミンC・Eの不足は、フリーラジカルによる細胞ダメージを促進し、色素沈着を進行させます。特にビタミンCはメラニン生成を抑制し、チロシナーゼという酵素の働きを阻害する役割があるため、不足すると茶クマの原因になります。女性は美容目的で果物や野菜を意識して摂る傾向がありますが、調理法や保存状態によってビタミンが損なわれていることも少なくありません。
  • コラーゲン生成の低下:
    タンパク質やビタミンCの不足はコラーゲン生成を阻害します。コラーゲンは皮膚の約70%を構成する重要なタンパク質で、その合成には十分なタンパク質とビタミンCが必須です。特に女性の場合、過度な低カロリー・低タンパク質ダイエットにより、1日に必要な60g程度のタンパク質さえ摂取できていないケースが多く見られます。これが皮膚の薄化や弾力低下を招き、黒クマを促進します。
  • 水分摂取不足:
    適切な水分補給がされないと、血液の粘度が上昇し循環が悪くなります。成人女性の体は約50〜60%が水分で構成されており、1日に必要な水分量は約2〜2.5リットルです。しかし、「水を飲むと太る」という誤った認識や、トイレに行く回数を減らすために水分摂取を控える女性も少なくありません。脱水状態では血液濃縮が起こり、目元の血行不良から青クマが生じやすくなります
  • 亜鉛不足:
    亜鉛は細胞の修復や免疫機能に重要なミネラルで、皮膚のターンオーバーや色素代謝にも関与しています。女性は男性より亜鉛の必要量が少ないものの、吸収率も低い傾向があります。亜鉛不足は皮膚の修復能力を低下させ、炎症後の色素沈着を悪化させる可能性があります。
  • ビタミンK不足:
    ビタミンKは血液凝固だけでなく、毛細血管の強化にも重要です。不足すると血管の脆弱性が増し、目元に青クマが生じやすくなります。納豆や緑葉野菜に多く含まれますが、過度な欧米化食や偏食傾向がある女性では摂取不足が懸念されます。

特にダイエットに敏感な若い女性や、忙しさで食事が不規則になりがちな働く女性に多く見られます。また、妊娠・出産・授乳期の女性は鉄分やカルシウムなどの栄養素の需要が急増するため、より注意が必要です。日本産婦人科学会の調査では、妊婦の約30%が妊娠後期に何らかの栄養不足状態にあると報告されています。

5. メイクや洗顔の影響

日々のメイクや洗顔方法が、知らず知らずのうちにクマを悪化させていることもあります。日本女性の約87%が毎日メイクをしているというデータもあり、長年の積み重ねによって目元への影響は無視できません。特に眼の周囲の皮膚は顔の中で最も薄く(約0.6mm程度)、バリア機能も弱いため、化粧品の刺激や物理的な摩擦の影響を受けやすい部位です。

メイクや洗顔によるクマへの影響

  • 不適切なメイク落とし:
    こすりすぎや強い洗浄力の製品は皮膚を傷つけ、色素沈着や炎症を引き起こします。特に目元は1回のメイク落としで平均約20回もこする傾向があるという研究結果があり、この繰り返しが真皮層のコラーゲン繊維を損傷させ、皮膚バリア機能の低下を招きます。化粧品業界の調査では、女性の約65%が「目元を念入りにこする」習慣があると報告されています。
  • アイメイクの刺激:
    アイシャドウやマスカラなどに含まれる顔料や金属成分(特にカーボンブラックやクロムオキサイドグリーンなど)が、長時間皮膚に接触することで微小な炎症を起こし、メラニン産生を促進することがあります。特に敏感肌の女性(日本人女性の約40%)は、この影響を受けやすいと言われています。
  • アレルギー反応:
    化粧品成分によるアレルギー性接触皮膚炎は、目の周りの腫れや赤みを引き起こし、その後のメラニン沈着(茶クマ)の原因になります。特に防腐剤(パラベン類)、香料、着色料などが主なアレルゲンとなります。日本皮膚科学会の調査では、化粧品によるアレルギー反応を経験したことがある女性は全体の約15〜20%にのぼると報告されています。
  • 防水メイクの影響:
    ウォータープルーフやロングラスティングタイプのアイメイクは油分や高分子ポリマーが多く含まれ、通常の洗顔料では落としきれません。そのため、強力なクレンジング剤を使用したり、強くこすったりする必要が生じ、皮膚への負担が増します。これらの製品は通常のメイクより約2〜3倍の摩擦力で落とす必要があるとされています。
  • 老化促進物質の蓄積:
    不十分なクレンジングにより、微粒子汚染物質(PM2.5など)や活性酸素が皮膚に残留すると、酸化ストレスが増加し、シミやくすみ(茶クマ)の原因となります。特に都市部に住む女性は、メイクと大気汚染物質の複合的な影響を受けやすいと考えられています。
  • 間違った洗顔水温:
    熱すぎるお湯(40℃以上)での洗顔は、皮脂膜を過剰に除去し、皮膚の乾燥と炎症を引き起こします。一方、冷たすぎる水は毛穴を収縮させ、クレンジングの効果を下げます。目元のような敏感な部位には、32〜35℃程度のぬるま湯が理想的です。
  • 角質層の損傷:
    過度な洗浄や強いスクラブ剤の使用は、皮膚の最外層である角質層を傷つけます。角質層は水分保持やバリア機能を担っており、その損傷は皮膚の脆弱化と色素沈着を促進します。特に角質ケア製品の使用頻度が高い20〜30代の女性に注意が必要です。

これらの問題は、特に毎日フルメイクをする働く女性や、メイク初心者で適切な技術を身につけていない若い女性に多く見られます。美容研究所の調査によると、女性の約70%が「メイク落としは丁寧にしているつもり」と回答する一方、実際には約60%が「目元を強くこする習慣がある」と回答しており、その認識と行動にギャップがあることが明らかになっています。

6. デジタルデバイスの使用増加

スマートフォンやパソコンの長時間使用は、現代女性特有のクマの原因となっています。総務省の調査によると、日本人女性のスマートフォン平均使用時間は1日約4.5時間、特に20代女性では6時間を超えるという結果も出ています。また、テレワークの普及により、パソコン作業時間も大幅に増加しており、1日の総スクリーンタイムは10時間以上に達する女性も少なくありません。

デジタルデバイスが及ぼすクマへの影響

  • ブルーライトの影響:
    デジタルデバイスから発せられるブルーライト(波長450〜495nm)は、皮膚の深層まで到達し、活性酸素種(ROS)の発生を促進します。これにより酸化ストレスが増加し、メラニン生成酵素が活性化されて茶クマの原因となります。皮膚科学研究では、毎日8時間以上のブルーライト曝露により、メラニン生成が最大39%増加するという結果も報告されています。女性の皮膚は男性より薄いため、この影響をより受けやすいとされています。
  • 目の疲労:
    長時間の画面注視による眼精疲労(アイストレイン)は、眼窩周囲の血行不良を引き起こします。通常、人間は1分間に約15〜20回まばたきをしますが、デジタル画面を見ている時は約5〜7回に減少します。これにより角膜の乾燥や毛様体筋の緊張が生じ、目の周りの筋肉が長時間収縮状態となります。その結果、目周辺の微小循環が阻害され、静脈血のうっ滞を引き起こし、青クマを悪化させます。眼科医療機関の調査では、1日6時間以上スクリーンを見る女性の約70%が、目の周りの血行不良の兆候を示しているという結果があります。
  • まばたきの減少:
    画面を見ている時はまばたきの回数が減少し、涙の蒸発が促進されて目の乾燥を招きます。ドライアイは結膜や角膜の炎症反応を引き起こし、その炎症性物質が周囲の皮膚にも影響を与えます。日本眼科学会の調査では、20〜40代女性のドライアイ有病率は約35%で、男性の約2倍という結果が出ています。
  • 姿勢の悪化:
    前かがみの姿勢(テキストネック)でスマートフォンを見ることで、頭部の重量(約5kg)が首に与える負担が増大し(最大約27kgの圧力)、頚部の血管とリンパ管が圧迫されます。これにより顔全体の血行とリンパの流れが阻害され、目の周りのむくみやうっ血を招きます。特に女性は男性より頚部筋が細いため、この姿勢による悪影響を受けやすいとされています。
  • 睡眠の質低下:
    就寝前のデジタルデバイス使用は、ブルーライトによるメラトニン(睡眠ホルモン)分泌の抑制を引き起こします。日本睡眠学会の調査では、就寝前30分以内にスマートフォンを使用する女性は、そうでない女性と比べて平均睡眠時間が約40分短く、熟睡感も50%低下しているという結果があります。この睡眠の質と量の低下が、クマの悪化に直結します。
  • 皮膚バリア機能の低下:
    デジタルデバイスから発生する微量の電磁波と静電気は、皮膚表面の荷電状態に影響を与え、微細な埃や汚染物質を皮膚に引き寄せる効果があるとされています。これらの蓄積が皮膚バリア機能を低下させ、炎症反応や色素沈着を促進する可能性があります。特に化粧をしている女性の肌は、これらの物質が付着しやすい状態にあります。
  • デジタルエイジング:
    「デジタルエイジング」という言葉が皮膚科学の分野で近年注目されていますが、これはデジタルデバイスの過剰使用による複合的な肌老化現象を指します。ブルーライト、乾燥、電磁波、不適切な照明環境などの複合的作用により、肌の老化が加速し、クマを含む様々な肌トラブルが増加する現象です。20代後半から30代前半の女性に顕著に見られる現象だと言われています。

このようなデジタルデバイスの影響は、スマートフォンを多用する若い女性から、在宅ワークでパソコン使用時間が増えた30〜40代のワーキングマザーまで、幅広い年代の女性に影響を与えています。実際、コロナ禍以降、テレワークを行う女性の約65%が「目元の疲れやクマが悪化した」と実感しているというアンケート結果もあります。

7. 加齢による組織の変化

年齢を重ねるにつれ、目の周りの組織にも変化が生じ、クマが目立ちやすくなります。特に女性の場合、30代後半から始まる女性ホルモンの変化と共に、これらの加齢変化が顕著になります。40代以降は閉経に向けてエストロゲンが急速に減少し(年間約3〜5%)、皮膚や支持組織への影響が加速度的に進行します。

加齢による具体的な影響

  • コラーゲン・エラスチンの減少:
    30代後半から急速に減少し始め、皮膚の薄化や弾力低下を招きます。女性の皮膚は加齢に伴い、コラーゲン量が毎年約1〜1.5%ずつ減少すると言われていますが、閉経後の5〜10年間ではその減少率が約30%にまで加速します。目元の皮膚は元々薄いため(約0.6mm)、この変化が特に顕著に現れます。コラーゲン不足により皮膚が薄くなると、下層の血管が透けて見えやすくなり、青クマが目立ちます。また、エラスチンの減少により皮膚の弾力が低下し、たるみが生じやすくなります。
  • 眼窩脂肪の変化:
    脂肪の減少や下垂により、目の下にくぼみができ、黒クマが目立ちます。特に40代以降の女性では、脂肪の総量が減少すると同時に、眼窩隔膜という支持組織の弱化によって、残存脂肪が前方に脱出する「眼窩脂肪脱出」が起こります。これにより、「ふくらみ」と「くぼみ」が混在する複雑な陰影が生じ、クマをより目立たせます。また、「脂肪室再分布」と呼ばれる現象により、顔の脂肪が上部から下部へと移動し、目元の立体感が失われていきます。
  • 骨密度の低下:
    閉経後の女性は特に骨密度が低下しやすく、眼窩(目の周りの骨)の形状変化により陰影が生じやすくなります。閉経後10年間で女性の骨密度は平均15〜20%減少するとされており、これは眼窩縁(目の周りの骨の縁)の後退や拡大につながります。特に下眼窩縁(目の下の骨)が後退すると、支持力が失われて皮膚や筋肉が下垂し、クマの原因となります。最新の3Dスキャン研究では、40歳と60歳の女性の眼窩周囲の骨格を比較すると、平均で約2.5〜3mm後退していることが確認されています。
  • 皮膚の乾燥:
    加齢とともに皮脂や天然保湿因子が減少し、乾燥による皮膚の炎症や色素沈着が起こりやすくなります。40代以降の女性は皮脂分泌量が20代の約60%まで低下し、角質層の水分保持能も減少します(加齢により角質層の水分量は最大40%減少)。乾燥した皮膚はバリア機能が低下し、環境刺激に敏感になるため、色素沈着を起こしやすくなります。また、細胞のターンオーバー(約28日周期)も遅延し、40代では約35〜40日、50代では約45〜60日と長くなることで、メラニンの排出が滞り茶クマが残りやすくなります。
  • 血管壁の変化:
    加齢により毛細血管の壁が薄くなり、透過性が高まります。これにより血液成分が周囲組織に漏出しやすくなり、これがヘモジデリン(鉄分を含む色素)として沈着すると、青紫色のクマの原因となります。特にエストロゲンには血管保護作用があるため、その減少により血管の脆弱性が増します。
  • 眼輪筋の衰え:
    目の周りの筋肉(眼輪筋)が加齢により衰えると、皮膚を支える力が低下し、たるみが増加します。MRIを用いた研究では、60代女性の眼輪筋の容積は30代女性と比較して約25〜30%減少していることが示されています。これにより目の周囲の皮膚のテンションが低下し、陰影が増加します。
  • ヒアルロン酸の減少:
    加齢とともに真皮層のヒアルロン酸量が減少(50歳では20歳時の約50%)し、皮膚の水分保持能と弾力が低下します。ヒアルロン酸1gは最大6Lもの水分を保持できますが、その減少により皮膚の充実感が失われ、目の下のくぼみが目立つようになります。

これらの加齢変化は、40代以降の女性において相乗的に作用し、複合的なクマ(青クマ、茶クマ、黒クマの混合)を形成します。日本皮膚科学会の調査によると、50歳以上の女性の約90%が何らかの目の下のクマを自覚しており、そのうち約65%が「複数の要因が混在したクマ」と診断されています。また、加齢による組織変化は個人差が大きく、遺伝的要因、日焼け履歴、喫煙・飲酒習慣、ホルモン療法の有無などによっても進行速度が異なります。

まとめ|あなたに合ったクマ対策を見つけるために

あなたに合ったクマ対策を見つけるために

目の下のクマは、単なる美容の問題ではなく、体の状態を反映するサインでもあります。特に女性は、ホルモンバランスの変化や生活環境の影響を受けやすいため、年齢や状況に合わせた対策が重要です。

  1. クマのタイプを知る:
    青クマ、茶クマ、黒クマのどのタイプかを見極め、原因に合った対策を取りましょう。
  2. 年齢に合わせたケア:
    20代は予防、30代は初期ケア、40代以降は積極的なケアと、年代に合わせた方法を選びましょう。
  3. 生活習慣の見直し:
    睡眠、食事、運動など基本的な生活習慣の改善が、クマ対策の基本です。
  4. 適切なスキンケア:
    クマのタイプに合った成分を含む製品を選び、正しい使用法で継続することが大切です。
  5. 必要に応じて医療的アプローチ:
    セルフケアで改善が見られない場合は、形成外科や美容皮膚科での相談も検討しましょう。

Drやなの監修コメント

一言で目のクマといっても、いろいろなタイプや原因があることがわかります。私は外科医ですので、外科的なアプローチで改善可能な目のクマに関しては、形成外科専門医として、患者さん一人ひとりの状態に合わせた適切な治療を行ってきました。

クマの状態によっては完全に解消するのが難しい場合もありますが、正しい知識と適切なケアによって、改善させることが可能です。

目の下のクマに悩む女性の皆さんが、自分に合った方法で明るく健やかな目元を取り戻せるよう、この記事がお役に立てば幸いです。

まぶた手術を得意とする形成外科Dr.簗(やな)由一郎

監修:簗 由一郎

形成外科専門医の簗(やな)由一郎です。眼瞼下垂などの「まぶたの手術」を専門に、埼玉・東京の医療機関で診療しています。20年以上の経験と技術で、自然で負担の少ない治療を心がけています。お悩みがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

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